公営企業会計の適用や繰入金の縮減、使用料の見直しなど、経営改善が進んできた公共下水道事業だが、総務省の令和元年度地方公営企業年鑑によると、いまだ法適用企業で63事業、法非適用企業で17事業が赤字を計上していることが分かった。赤字額が最も多いのは山梨県南アルプス市で5億1692万円、次いで福井県越前市が3億2566万円、沖縄県宮古島市で2億6732万円などとなっている。
下水道事業は「雨水公費、汚水私費」の原則から独立採算が基本とされているが、一部の大都市以外では使用料収入だけで汚水処理費を賄うことができず、毎年一般会計から多額の繰り入れを行っている。
供用開始直後であれば、下水道接続率の関係から他会計繰入金の占める割合が大きくなることはあるが、統計を整理すると香川県東かがわ市は供用開始39年であるにもかかわらず、使用料収入428万円に対して繰入金8755万円、高知県須崎市は供用開始38年で同1566万円に対して1億6344万円、青森県鰺ケ沢町は供用開始18年で同1650万円に対して1億6227万円などと、供用開始から10年以上が経過しても桁違いの繰り入れを行っている自治体も多いことが分かった(9~10面表2参照)。使用料収入に対する繰入金の割合が100%を超える(繰入金の方が多い)自治体は、法適用企業で152事業、法非適用企業で445事業あり、仮に収支を“黒字”としていても経営上の問題を抱える事業は全国で相当数あると考えられる。(続きは本紙で)